片頭痛の原因と症状、治し方(薬)
最終更新日 2021年06月23日
監修:医療法人青漣会 勝川脳神経クリニック
理事長 青山 国広
片頭痛とは
一般的に、頭痛を分類する際には一次性(明らかな器質的病変がない頭痛)と二次性(他の疾患が原因で起きる頭痛)に分けます。
一次性頭痛の中で多いのは、緊張性頭痛と片頭痛です。
また、症状が激烈な一次性頭痛として、群発頭痛というものもあります。
典型的には頭の片側のこめかみを中心にときに後頭部から反対側まで、脈打つようにずきずきと痛む頭痛を呈します。閃輝暗点とよばれる光が見えるなど、前兆を伴うこともあります。
年間有病率は男性が6-15%、女性が14-35%と、女性に多いということが分かっています。
しかし、小児おける有病率は男女差が無く、思春期以降に女性の比率が増え、また更年期を過ぎると顕著に減少することから、女性ホルモンとの関連も示唆されています。
片頭痛の分類は、国際頭痛学会(International Headache Society, HIS)によれば、6つに分けて論じられています。
- ・前兆のない片頭痛(普通型片頭痛、単純片頭痛)
- ・前兆を伴った片頭痛(片頭痛の中で前兆を伴うものは、3-4割を占めます。)
- ・慢性片頭痛
- ・片頭痛の合併症
- ・片頭痛の疑い
- ・片頭痛に関連する周期性症候群
片頭痛発作は、4-72時間程度持続することが一般的です。
片側に拍動性の頭痛が生じ、日常的な動作によって症状が増悪することが特徴的で、光や音に対する過敏症状も呈します。
診断基準としては、頭痛発作の持続時間が(未治療または治療無効の場合に)4-72時間、かつ、片側性・拍動性・中等度~重度の頭痛・日常的動作ができないといった症状のうち少なくとも2項目を満たす。さらに、頭痛発作中に悪心嘔吐または光や音への過敏症状を呈する。
こうした発作が5回以上あり、かつ他に頭痛を起こす原因が無い場合に、片頭痛と診断されます。
このように診断基準を並べて書くと難しいですが、「たまにずきずきとした痛みが数時間続くことがあって、安静にしていると徐々におさまる」というような場合には片頭痛の疑いがあると考えてよいと思います。
片頭痛は、痛みの起こり方や性状にも特徴がありますが、特に前駆症状や前兆を伴うことがあるのが何より特徴的です。
片頭痛の症状
片頭痛の関連症状には、下記の症状などがあります。
- ・視覚症状
- ・感覚症状
- ・言語症状
- ・運動症状
- ・脳幹症状
- ・網膜症状
最も一般的なのは視覚症状であり、前兆があるタイプの片頭痛患者(片頭痛患者の3-4割)の9割に視覚的な前兆がみられるとされています。
代表的には閃輝暗点とよばれるもので、視点をあわせたところにジクザグした形が現れ、徐々に形が拡大したり、ちかちかしたりするような症状が出ます。
次に多いのが感覚障害です。チクチクするような感じが頭部以外にも広がってくるものです。
場合によっては感覚が鈍くなる症状(感覚鈍麻)も伴います。
時に、運動麻痺(脱力)が出てくることもあり、そうした場合には脳梗塞をはじめとした脳血管障害との鑑別に注意が必要です。
片頭痛の原因
こうした前兆が起こっている際には、大脳皮質の血流減少を認めるとの報告があります。つまり、片頭痛は血流の変化に伴って症状が出ている可能性が考えられます。
ただ通常は、この脳血流の減少の程度は脳細胞が死滅するレベルではないので、脳梗塞に至ることはまずあまりありません。そのため、麻痺などの症状が出ても可逆性であり病状が落ち着けば自然と元に戻ります。
これらの変化があった領域は、数時間の経過を経て、むしろ徐々に血流過多の状態へ移行していくことも知られています。
はっきりとした発症機序はまだ分かっていませんが、血管の収縮拡張や、神経の炎症などによって起こっているとする説が有力です。
また、ある研究結果では、片頭痛患者は脳卒中や心疾患のリスクが通常よりも高いと言われています。
詳しい因果関係については明らかにされていませんが、おそらくは交感神経の過緊張が続くことなどが影響していると思われます。
片頭痛の治し方(予防薬)
片頭痛の予防的治療はさまざまなアプローチがあります。
基本となるのが薬物療法です。
よく使用されるのが、NSAIDsと、トリプタン製剤です。
■NSAIDs
最もよく使用されるのが非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であり、ロキソプロフェンやジクロフェナクが有名です。
NSAIDs自身は、片頭痛特有の治療薬ではなく、頭痛一般に対して、症状をおさえるために鎮痛薬として用いられます。
■トリプタン
スマトリプタン(イミグラン)、ゾルミトリプタン(ゾーミッグ)、エレトリプタン(レルパックス)、リザトリプタン(マクサルト)、ナラトリプタン(アマージ)などといった、トリプタン製剤が片頭痛にはよく用いられる最も代表的な薬です。
効果的に使うには、使用のタイミングが重要です。頭痛を感じたらすぐ飲むのがよいです。
また閃輝暗点(せんきあんてん=光るギザギザが5~20分間程度続けて見える)が出るタイプの人は、前兆が少しおさまってきたタイミングで飲むと効果的です。
ただし、心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳血管障害、末梢血管障害などの場合には投与に慎重になる必要がありますので、人からもらって飲んだりせず、必ず医師に相談して処方してもらいましょう。
■制吐剤
メトクロプラミドや、抗ヒスタミン薬が嘔気嘔吐に対して用いられることがあります。
■抗うつ薬
三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬などが用いられることがあります。
また、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も、効果があると言われています。
■麦角アルカロイド
エルゴタミンという製剤が以前は片頭痛予防・治療としての主要な薬の1つでしたが、麦角中毒のため最近はあまり使用されなくなってきました。
■ステロイド
頭痛の際にステロイドを静脈内投与することで痛みや再発を抑えられる可能性が指摘されています。
■その他
睡眠薬で一時的に眠ると、覚醒時には症状が改善することもあります。
■新薬情報
レイボー
アイモビーグ(2021年8月12日)
アジョビ(2021年8月30日)
エムガルティ(2021年4月26日)
また、こうした薬物療法に加えて誘発因子を回避するというアプローチも大切です。
誘因として考えうるものは非常に多岐にわたります。
代表的なものとしては、光、音、匂い、天候、ストレス、寝不足、喫煙、飲酒、チーズ、赤ワイン、チョコレート、ナッツ、コーヒー、加工肉などが挙げられます。
そうした生活環境や、日々の生活習慣によって大きく左右される症状ですので、頭痛ダイアリーをつけることが推奨されています。
頭痛の起こった日時や時間、前兆や関連する症状を1か月程度記録し、それを分析して自身の頭痛の起こり方の特徴を探るものです。
漫然とNSAIDsをはじめとした鎮痛薬を使用していると、薬物乱用頭痛を起こすことがあります。
これは痛み止めを常用することでかえってそれによって痛みが出てしまう現象のことです。
そのため、片頭痛が疑われる場合には、ロキソニンなどの痛み止めだけではなく、きちんと片頭痛の病型診断をして予防薬を併用することや、頭痛ダイアリーを用いて日常生活を見直すなど、総合的なアプローチが重要です。
片頭痛の治し方(セルフケアを組み合わせましょう )
お薬の治療と合わせて、セルフケアを組み合わせましょう。
これまであなたが生活の中で注意してきたことをもう一度見直し、あらためて取り組んでみませんか?
・食生活
片頭痛は、空腹時など、血糖値が低下したときに起こることがあります。
朝食を抜くことは片頭痛の原因になるので、忙しくてもとる方がよいでしょう。
食事をつくる際には、片頭痛を誘発する食品をなるべく避けるのがポイントです。
代表的なものとして赤ワイン、チョコレート、チーズなどがあります。
これらの食品に共通する片頭痛誘発物質はチラミンなどのアミン類が考えられます。
アミンを含むピーナッツ、豚肉なども片頭痛の誘発因子と考えられています。
また、アルコール類には、血管拡張作用があるだけでなく、その含有物にも片頭痛の原因になるものもあるので注意が必要です。
・睡眠
良質な睡眠をとるように工夫してみましょう。
寝不足も、寝すぎも、片頭痛の原因になることが考えられます。
片頭痛で目が覚めてしまう場合は、空腹や、前日の飲酒、カフェインの取りすぎなどが理由として考えられます。
・入浴
入浴すると血管が拡がって、 片頭痛が起こりやすくなります。
片頭痛の予兆があるときなどは、シャワーだけにしておきましょう。
・スケジュール管理
仕事も、生活も、ついつい忙しくなってしまう…そんな時は心身に余裕ができるようスケジュールを調整してみましょう。
長時間緊張状態が続くときは、途中でリラックスタイムを設けてストレッチをするなど、心身をほぐすと効果的です。
・外出
日光、暑さ、乾燥、湿気、騒音など、外出先の環境から片頭痛が誘発されることもあります。人混みや換気の悪い場所を避けて、外出するようにしましょう。
できれば、サングラスを使って直射日光を遮ったり、空腹を避けるため飴などの糖分をとってから出かけるといいでしょう。
・リラックス
頑張りすぎず、過労に気をつけて、うまく休憩をとりましょう。
気持ちをリラックスさせて、心配ごとなどを考えすぎないようにしましょう。
頭痛体操をしてみよう!
首から肩にかけてのストレッチは、片頭痛の予防に効果的です。
片頭痛の回数が増えると、首の後ろにまで頭痛回路が伝わり、痛みがひびいてしまいます。生活の中に、適度な運動を取り入れましょう。肩を回すなど、椅子に座りながらできる簡単なストレッチで体を動かして、片頭痛の原因となる、頭を支えている首から肩にかけての筋肉の緊張をやわらげます。
こうした体操は、後頸部(こうけいぶ)の筋群をほぐして、脳の痛みを調整する筋に良い刺激を送り、片頭痛を予防することが期待できます。
片頭痛だと感じたら病院やクリニックへ
片頭痛治療は奥が深く、安定するまで時間もかかります。
多くの医療機関ではその場しのぎで痛み止めを出すだけの治療が行われているのが現状ですが、早めにきめ細やかな対応をすることで1人1人に合った頭痛との付き合い方が見つかり、早期に快適な日常生活を取り戻すことができる可能性が高まりますので、「片頭痛かもしれない」と思われる場合にはお近くの神経内科や脳神経外科で相談されるとよいでしょう。