小児の頭部外傷

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小児の頭部外傷

最終更新日 2020年03月01日
監修:医療法人青漣会 勝川脳神経クリニック
理事長 青山 国広

こどもは頭が重く、容易に転んでしまいます。また、遊びの中で遊具から転落したり、階段から落ちたりして医療機関を受診されることも多々あります。
頭は人間にとって最も重要な部位であり、重大な病気を見逃すわけにはいきません。通常、頭の中で出血が起こっていないかどうかを調べるには、頭部CT検査を行います。しかし、CT検査は放射線被ばくが避けられないため、(特に小児については)頭をぶつけるたびに毎回撮影するわけにもいきません。
そこで、脳外科や救急外来の医師は毎回本当に悩みながら小児の頭部外傷を診察しています。診察の際に参考にするものとして、いくつかの基準が提唱されています。有名なものは、NICEガイドラインや、カナダ頭部CTルール、ニューオリンズ基準などです。

<NICEガイドライン>

  • ・危険な受傷機転(3m以上の転落、高速道路での事故、など)
  • ・意識消失(5分以上)
  • ・健忘(5分以上)
  • ・傾眠傾向
  • ・嘔吐(連続しない3回以上の嘔吐)
  • ・痙攣
  • ・GCS13以下(1歳未満はGCS14以下)
  • ・開放骨折、陥没骨折、大泉門膨隆
  • ・頭蓋底骨折を疑う所見がある
  • ・神経診察学的に有意な所見がある
  • ・1歳以下で頭部に5㎝以上の打撲痕、腫脹、挫創

<カナダ頭部CTルール>

  • ・危険な受傷機転
  • ・外傷後2時間経っても意識清明でない
  • ・頭蓋骨の開放骨折、陥没骨折の疑い
  • ・頭蓋底骨折を疑う所見がある
  • ・2回以上の嘔吐
  • ・65歳以上
  • ・受傷30分以上前の記憶が消失している

以上をみてわかるように、まず大切なのが、受傷機転です。「おすわりをしていたらバランスを崩して倒れてしまった。」というような場合には、通常は頭部CTの適応ではありません。また、受傷したあとの様子も大切です。陥没骨折をしていたり、痙攣したり、頭蓋底骨折を疑う所見(目が内出血でパンダのようになったり、耳から血が出たり、など)がある場合は、素人目にみても頭の中に出血など無いか心配になりますが、実際そこまで明らかな所見がある場合ばかりではありません。頭を打った後に、「ぐったりしている」「嘔吐を繰り返している」ような場合には注意が必要だと覚えておくとよいでしょう。(頭を強く打った後にさんざん泣いてぐったり疲れて眠ってしまった場合などは、判断に悩むことがあります)
ただし、上記のルールに沿って判断しても、結局のところ検査をしないと、はっきり診断はつきません。医師も頭の中を透視できるわけではないため、ある程度経験のある医師が総合的に考えて、慎重に判断する必要があります。経過観察の指示となった場合、親御さんにできることは、家で経過を慎重にみるということです。特に受傷後24時間以内には気を付けましょう。それでも判断に困る場合は再度医療機関で相談されるのがよいでしょう。

スポーツに伴う軽症頭部外傷における問題点とその対策

頭部外傷には病態が重度な重症頭部外傷と軽度な軽症頭部外傷があります。
軽症頭部外傷の原因として、転倒、交通事故などによる外傷やスポーツ中に生じる外傷などがあります。この転倒や交通事故などによる頭部外傷とスポーツ中に生じる頭部外傷との大きな違いは、スポーツの場合は同じような頭部外傷を繰り返して生じる可能性がある、ということです。
脳へのダメージが残っている状態で、頭部への外傷が繰り返されることで、脳への更なるダメージが加わり、症状を更に悪化させる可能性があります。
以下にスポーツに伴う軽症頭部外傷における問題点とその対策について述べます。

<発症機序>

スポーツによる頭部外傷は、なんらかの動きの中で生じることが多く、直線加速度に伴う直達外力というより、回転加速度に伴う脳の揺さぶりが原因と考えられています。その結果、脳実質の歪みによる神経線維の損傷や、脳表面の血管損傷による出血などに伴い様々な症状が出現します。

<脳実質の歪みによる神経線維の損傷;脳振盪>

症状
脳表面の血管損傷による頭蓋内出血により明らかな神経症状が認められる場合には、判断に迷いませんが、問題となるのは、症状が軽度である場合です。
脳実質の歪みによる神経線維の損傷による症状として、いわゆる脳振盪に伴う症状があります。脳振盪に関連する症状として、急性期の症状と、慢性期の症状があります。表1)

現場での対応
頭部外傷が生じたとき、躊躇なく試合や練習から離脱させ、安静にさせます。脳振盪に伴う上記症状を認める場合には、頭部の評価ができる医療機関への受診が勧められます。

脳振盪への対応・スポーツ現場への復帰
脳振盪を認めた後、以下のような対応が重要と考えられます。
①受傷当日の練習や試合への復帰は禁止
②上記症状が継続する間はスポーツ現場への復帰は禁止
③24時間経過した後、上記症状が無いことを確認し、表2)の復帰プログラムに沿って段階的に競技へ復帰する
ただし、小児の場合、上記症状をしっかりと訴えることができない場合もあるため、
しっかりと話を聞いてあげることが重要と考えられます。

繰り返す頭部外傷の影響
脳振盪を認めるような頭部外傷を受けてから数日から数週間後に2回目の頭部外傷を負うことにより、致死的な脳腫脹を発症することがあります。
その発生機序として、1度目の頭部外傷で脳血流の調節機能が障害を受けているところへ、2度目の外傷によりさらに脳血流の調節機能が障害を受け、脳血流上昇、脳圧上昇により脳浮腫を生じるとの報告があります。
脳血流の調節機能を改善させるためにも、脳振盪後は十分な休養の期間を取ることが重要と考えられます。

<脳表面の血管損傷による出血を認める場合;急性硬膜下血腫など>
脳の表面の血管がわずかに損傷し、脳表面に出血を認めるも少量であるため、重篤な症状が出現せず、軽度の頭痛のみの場合もあります。
しかし、損傷した血管は非常に脆弱であるため、頭部外傷を繰り返した場合、脆弱な血管が損傷し、大出血・脳腫脹を生じる可能性があります。
そのため、頭蓋内に出血を認めた場合は競技への復帰を原則禁止としています。

表1)脳振盪関連症状

急性期
頭痛/めまい/軽度の意識障害/耳鳴り/吐き気/嘔吐/視覚異常

慢性期
記憶障害(新規)/集中力低下/些細なことで不機嫌/睡眠障害/人格変化/疲れやすい


表2 脳振盪後の復帰のプログラム

①運動中止と休息
②歩行やサイクリングなどの軽度の有酸素的運動(抵抗性トレーニングは避ける)
③スポーツに特化した運動. 徐々に抵抗性トレーニングの開始
④非・コンタクトトレーニング
⑤メディカルチェック後のフル・コンタクトトレーニング
⑥試合参加

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