認知症予防 / 物忘れの原因と対策
最終更新日 2019年11月10日
監修:医療法人青漣会 勝川脳神経クリニック
理事長 青山 国広
物忘れと認知症
認知症とは、生後いったん正常に発達した種々の精神機能が後天的に損なわれたことによって日常生活を営めない状態のことをいいます。老化に伴う年齢相応の認知機能の低下や、頭部外傷に伴い高次機能が障害されたものは含めません。また、先天的な知的障害や精神遅滞も含めません。かつては、痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念ですが、言葉が適切でないとのことで現在では認知症と呼ぶように改められました。
日本で65歳以上の高齢者においては10人に1人が認知症であると推計されています。さらに、85歳になると4人に1人という高い割合になります。高齢化の進む日本では近い将来300万人を突破するでしょう。
認知症の原因疾患としては下記のような疾患が代表的です。
- ・アルツハイマー病
- ・血管性認知症
- ・前頭側頭葉変性症
- ・レビー小体型認知症
それぞれ、特殊なたんぱく質が脳に沈着したり、動脈硬化が進行することで脳の連携がうまくいかなくなったりすることで起こったりと、病態は異なります。ただ、認知症になるのは高齢者が多く、いろいろな持病を抱えていることがほとんどであり、それぞれの病気の症状には重なる部分も多いので、ひとりひとりの患者さんにおいて、初診時に明確に原因を特定できるとは限りません。
認知症の症状は、「最近ものが覚えられない」「前にやっていたことが思い出せない」といった認知機能の障害と、「いつもできていたことができない」「徘徊してしまう」などの行動・精神の異常に大きく分けられます。認知症の初期には、まず記憶に関した認知障害が出現します。その他、「言おうと思っていた言葉が出てこない」「最近意欲が無い」「ちょっとしたミスが目立つ」といった症状も出現します。次第に進行すると、妄想が出てくるようになったり、暴言をはいたり暴力的になったりするといった症状が出てきます。多くのご家族は、他の人に危害が及ぶ可能性が出てきた段階で初めて、困って相談されるケースが典型的です。
認知症の評価には、日本では長谷川式認知症スケールとMMSE(Mini Mental State Examination)というテストが用いられることが一般的です。たとえば長谷川式認知症スケールでは「100から7ずつ引き算していく」ような問題に対して回答してもらい、その合計点から認知機能を評価するものです。
DSM-Ⅳによる認知症の診断基準
- ・多彩な認知欠損。記憶障害以外に、失語、失行、失認、遂行機能障害のうちのひとつ以上。
- ・認知欠損は、その各々が社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準から著しく低下している。
- ・認知欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない。
- ・痴呆症状が、原因である一般身体疾患の直接的な結果であるという証拠が必要。
(厚生労働省HP http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html より抜粋)
認知症の治療はまだ確立していません。多くは不可逆的であり、元通りに治すことは困難です。しかし、進行を遅らせることが可能な場合があります。また、慢性硬膜下血腫や、正常圧水頭症など、治療をすることで治る認知症もあります。近年、認知症の中でもアルツハイマー病に対しては、治療できる薬が出てきました。アルツハイマー病の発症にアミロイドβという物質が関連していることが関与していることがわかってきていますが、それを除去することを目指す薬が開発・販売されています。
また、最近は若年性認知症という病態も注目されています。若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症のことです。特に18歳から44歳までに発症するものを若年期認知症と呼び、45歳から64歳で発症するものを初老期認知症とよびます。頻度としては、45歳から64歳の男女で、10万あたり60-120人程度いるのではないかと推測されています。
認知症は、本人だけでなく家族や介護者の肉体的・心理的負担が非常に大きい疾患です。子育てが大変なことは皆知っており、まわりからも理解や協力が得られやすいものの、認知症の高齢者を介護することの大変さは身近にいないと分からないため、孤独にたたかっているご家族・介護者が大勢いらっしゃいます。また、子どもであれば次第に大きくなって徐々に手がかからなくなりますが、認知症は徐々に進行し介護の負担が増していきます。そうしたことから、介護疲れ、介護うつを発症しやすい代表的な疾患になっています。「最近物忘れが多い」「認知症かな?」と思ったら、大きく困っていなくても、まず一度医療機関に相談することが大切です。早期に診断がつけば治ったり、進行を遅らせられたりする場合もあります。どんな疾患も早期発見・早期治療が最も大切なことですので、決して自分だけで抱え込まずにまず早めに相談することが大切です。
認知症の予防
物忘れの原因
物忘れの対策
物忘れ(認知症)の診断と治療について
高次機能障害として症状が出現し、程度の差はありますが、誰しも加齢に伴い記憶の障害(もの忘れ)、判断力の低下をきたします。
しかし、疾患により、加齢伴う以上に症状が出現した場合、診断、治療が必要になります。
変性疾患としてはアルツハイマー、白質変性が、血管障害としては脳出血後遺症、脳梗塞後遺症、外科的に治る可能性がある疾患として、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫がなどあります。
問診、MRI検査、高次機能検査にて除外診断、確定診断を行い適切な治療を行うことができます。
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