小児脳神経外科(子供の頭痛などに対応)

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小児脳神経外科(子供の頭痛などに対応)

当院は、小児脳神経外科にも対応しています

お子さんが、頭の痛みを訴えたり、手足の動きが悪くなったりした時、どこの病院へ行けば良いかわからない時があると思います。当院へはそのような時の窓口として来院していただければと思います。

子供の頭痛の原因と治療について

子どもの頭痛にはいろいろと原因がありますが、最も重要なことは、生命に危険があるような病気であるかどうか?です。つまり、手術をしなければならないようなものが潜んでいるにもかかわらず、検査をしなかったために発見が遅れ、診断された時には手遅れであった、といったことがないように前もって検査を行うことが重要です。

検査の結果、生命に危険があるような病気でなければ、とりあえず一安心となります。その後、その頭痛の原因を考え、時期的なものなのか、環境によるものなのか、経過をみるだけでよいものか、薬が必要なものなのか、などといったことを考えて治療を行っていきます。

小児脳神経外科では、頭の病気だけではなく、脊椎脊髄の病気も治療します

小児脳神経外科の対象となる病気はいろいろとあります。頭の病気だけでなく、脊椎脊髄の病気も治療します。主な治療対象の病気は、脳血管障害、脳腫瘍、脊椎・脊髄、頭部外傷、先天奇形、機能的疾患、炎症性疾患などがあります。これらの病気を見つけるために、当院ではMRIも用いることで、お子さんへの負担を極力軽減した状態で検査を行うことができます。

小児脳神経外科

お子さんが小さな時は、成長・発達に遅れがないだろうか、普段と異なる仕草があると、何か病気のサインではないだろうか、などといった心配が常にあると思います。
お子さんの脳・脊髄における成長・発達において、気を付けるべきポイントがその段階に応じていくつかあります。これらの注意すべきポイントで気になる点がございましたら、当院へご相談ください。
必要な時期に必要な検査を行うことで、何か問題があったとしても早期に対応が可能となります。脳・脊髄などの神経の病気は早めの対応が必要となる場合があります。
検査の結果、更なる治療が必要となれば、治療対応可能な病院へ紹介させていただきます。
脳・脊髄の検査方法として様々なものがありますが、画像として脳・脊髄を見る方法にMRIがあります。MRI検査を行う際、お子さんはじっとすることが難しいため、眠り薬を使用することが多いです。
しかし、ある程度大きくなってくると眠り薬が効かないため、検査が中止となることがあります。
当院では眠リ薬を使用せず、職員がお子さんをしっかりと保持し、さらに検査時間を可能な限り短くし、眠り薬なしでMRI検査を行っています。
さらに追加の検査が必要となれば、更なる検査が可能な病院へ紹介いたします。

気を付けるべきポイント

お子さんの成長・発達において、気を付けるべきポイントがあります、以下にそれぞれの段階における注意すべきポイントを記します。

お子さんはお母さんのおなかの中にいる時から成長・発達を続けます。その成長・発達の段階は大きく以下の6段階に分けられます。

①胎児期 ;妊娠から出生まで
②新生児期 ;生まれてから28日まで
③乳児期 ;生後1か月から1歳未満
④幼児期 ;1歳から5歳
⑤学童期 ;6歳から11歳
⑥青年前期;12歳から15歳

以下にそれぞれについて詳しく述べていきます。

①胎児期;妊娠から出生まで

産婦人科での腹部エコー定期検査において、頭が大きい、脳の中に水が貯留している、頭や背中にコブがある、などと診断される場合があります。その場合、お母さんにMRIの機械に入っていただき、おなかの赤ちゃんをMRIで検査します。
米国FDAのガイドラインによると妊娠18週以降の胎児はMRIの適応となる、と報告されています。頭が大きい場合、脳の中にできものがないか、出血していないか、脳脊髄液という水が脳の中に貯留していないか、などを確認する必要があります。
また、頭や背中にコブがある場合、皮膚、頭の骨、背骨がきちんと閉鎖せず、脳や背骨の中にある神経がそのまま飛び出している場合があるので、それらを確認します。
できもの、出血、脳内の水の貯留などにより、脳への圧迫が強くなるようであれば、早めに帝王切開で出産していただき、早急に手術を行う必要があります。

②新生児期;生まれてから28日まで

胎児期に認められていた脳の中の出血、水の貯留などが原因で頭の圧迫が強いようなら、早急に手術を行います。
脳の中のできものについても頭の圧迫が強いようなら全身状態を見ながら手術の時期を検討します。
頭や背中のコブについては、出生後、MRIにて頭や背中のコブの状態をさらに詳しく検査します。
急いで行う必要があるものと、症状の経過を見ながら外科的治療のタイミングを見計らうものとがあります。
急いで行う必要があるものは、皮膚が閉じず、神経がむき出しの状態になっているものであり、出生後早期に手術を行います。

③乳児期;生後1か月から1歳未満

この時期は身長、体重、頭囲、胸囲などが急激に成長する時期です。それに伴い様々な病態も出現します。 頭の骨は子どもの間は複数の骨が緩くくっついている状態で、脳を守る器として機能しています。脳が大きくなる時、その圧力が骨に伝わり、頭の骨も一緒に大きくなります。
しかし、骨の緩くくっついている部分が早い段階でしっかりとくっついてしまう場合がまれにあります。
脳は大きくなるのに器の頭の骨が小さいままだと、脳が圧迫されます。その結果、脳へ血液を送ることができなくなり、脳にダメージが加わります。
そのため、頭の骨を広げる手術が必要となります。
この時期は身長も急激に伸びます。背中の骨も急激に伸びていきます。背中の神経も伸びるのですが、背中の骨の方がたくさん伸びるので、脳に繋がっている背中の神経は頭側に引っ張られるように移動していきます。
この時、背中の神経が下の方でほかのものとくっついていると、背中の神経は下側から引っ張られた状態になります。
その結果、背中の神経が傷み、足の動きが悪くなったり、痛くなったり、尿が出にくくなったりします。背中の神経が下の方でくっついている原因はいろいろあります。
このくっついているところを手術で切ったり、剥がしたりする必要があります。
さらに1歳前後はつかまり立ちや、一人歩きを始める時期でもあります。まだ、バランスをとることが難しいため、よく転びます。その時に、頭をぶつけることで、頭の中に出血したり、頭の骨が折れたりする場合があります。
また、頭をぶつけたことをきっかけに脳の中や表面を流れている水の流れが悪くなり、頭の中に水が溜まってくる場合もあります。これらのために、頭の中の血をとる手術をしたり、水を抜いたりする手術が必要となる場合もあります。
また、これらの転んだ後に出てくる様々な病態が、いわゆる揺さぶられっこ症候群と言われる虐待の結果生じる病態と似ているところがあり、社会的な問題にもなっています。つかまり立ち、一人歩きを始めた時は今まで以上に十分に気を付けて見守ってあげる必要があります。
また、この時期は新生児期に行った背中のコブへの術後変化が生じます。先ほども記載した通り、背中の手術をしたところで神経がまわりのものにくっつくため、背中の神経が引っ張られ、その結果神経が痛み、足の動きが悪くなったり、足の痛みが出たり、尿が出なくなったりします。
手にもしびれなどが出ることもあります。
頭にいれている頭の中の水を抜くためのチューブが詰まったり、感染を起こした場合にはチューブを入れ替える手術が必要となります。

④幼児期;1歳から5歳

この時期の後半頃に、頭の血管の異常で脳梗塞がでてくることがあります。脳の血管が徐々に細くなっていく病気があり、脳に血液が行きにくくなり脳梗塞に至ります。
泣いている時に急に反応が悪くなったり、手足の動きが悪くなったり、上手に話すことができなくなったりした場合にこのようなことが起こっている場合があります。このような時は頭の検査を行い、場合によっては手術が必要となります。
おしっこの感染を繰り返すお子さんの中に、背中の神経が傷んでいることが原因の場合があります。背中の神経に脂肪の塊がくっついていたり、背中の神経を固定しているものが通常より固く、弾力性がなくなっていたりする場合があります。
このような状態で身長が伸びると背中の神経が引っ張られた状態となり、背中の神経が傷み、尿が出にくくなります。このくっついているところを手術で切ったり、剥がしたりする必要があります。
また、この時期も乳児期と同じように、新生児期に行った背中のコブへの術後変化が生じます。先ほども記載した通り、背中の手術をしたところで神経がまわりのものにくっつくため、背中の神経が引っ張られ、その結果神経が痛み、足の動きが悪くなったり、足の痛みが出たり、尿が出なくなったりします。
手にもしびれなどが出ることもあります。
頭にいれている頭の中の水を抜くためのチューブが詰まったり、感染を起こした場合にはチューブを入れ替える手術が必要となります。
さらに、頭の後ろにある脳の一部が下方に落ち込み、脳の一部や背中の神経が圧迫されることで、息がしにくくなったり、ご飯が飲み込みにくくなったり、頭が痛くなったりする場合もあります。
これらの症状が出た場合、圧迫を解除するための手術が必要となります。

⑤学童期;6歳から11歳

小学生になったにも関わらず、いつまでもおねしょをしてしまうことがあります。
その原因の一つに背中の神経に脂肪の塊がくっついていたり、背中の神経を固定しているものが通常より固くなっている場合があります。
身長が伸びると背中の神経が引っ張られた状態になります。その結果、背中の神経が傷み、足の動きが悪くなったり、痛くなったり、尿が出にくくなったり、尿を我慢することができずに出てしまう場合があります。
この場合も、手術が必要となることもあります。

⑥青年前期;12歳から15歳

この時期は成長ともに背中の骨が曲がってくる場合があります。原因不明な場合もありますが、その原因がわかっている場合もあります。
原因がわかっている場合にはまず、その原因となるものを手術を行います。
原因がわらかず、もしくは原因となる部位を手術したにも関わらず、背中の骨がさらに曲がってきた場合、コルセットで矯正したり、背中の骨にスクリューを打ち込んで背中の骨をまっすぐにする手術を行う場合があります。
原因の一つとして、脳と背中の神経の繋がっている部位において、小脳が下に落ち込むこととにより、背中の神経や脳幹を圧迫するため、様々な症状が出現します。
さらに、同部位での水の流れがよどむため、背中の神経の中に水が溜まってくることがあります。手術によって小脳が落ち込んでいるところの骨や硬膜を広げることで、脳幹、背中の神経への圧迫を解除し、さらに脳の周りの水の流れのよどみを解消します。

さらに、どの時期においても、頭の中にできものができる可能性はあります。できものがどんどん大きくなると、頭が痛くなったり、吐き気がしたり、手足が動かしにくくなったり、意識状態が悪くなったりします。この場合には手術で切り取る必要があります。

小児脳神経外科の対象となる病気一覧

小児脳神経外科の病気はいろいろとありますが、主なものとしては以下のようなものがあります。

  • ①脳瘤
  • 頭の骨と、脳の周りにある膜が欠損し、頭蓋内の内容物が一部飛び出した状態のことを脳瘤と言います。
    新たに出生する100万人のうち80-300人の割合で発生します。脳瘤のできる場所は頭のいろいろな場所にできます。頭の表面にある場合は、皮膚に覆われているかどうかが重要です。皮膚に覆われていない場合には、感染することがあるので、早期に手術が必要となります。
    頭蓋骨の前方の底面は鼻腔と接しているのですが、この部位でも脳瘤ができる場合があります。その場合、脳瘤は鼻腔内へ飛び出すため、鼻の通りが悪くなり、息苦しくなったり、ミルクの飲みが悪くなったり、脳脊髄液が漏れることによる髄膜炎などの感染を起こしたりします。
    治療方法としては、皮膚が破れているかどうかによります。破れていて、脳脊髄液が漏れているような場合には早急に修復術が必要となります。

  • ②脊髄髄膜瘤
  • 脊椎の骨と、脊髄の周りにある膜が欠損し、脊髄の内容物が一部飛び出した状態のことを脊髄髄膜瘤と言います。
    新たに出生する100万人のうち500-600人の割合で発生します。原因としては、栄養、環境、遺伝などが関与していると言われています。特に、お母さんが葉酸を適切に補うことで、約28%発生のリスクが減少する、との報告もあります。
    脊髄髄膜瘤の発生するレベルにより、下肢の運動感覚障害、排尿排便障害などの症状の程度が異なります。
    治療法としては、出生から遅くとも72時間以内の修復が必要となります。
    合併している病態として、水頭症、キアリⅡ型奇形があります。特に水頭症を併発していた場合、同時に頭の中にチューブを挿入し、頭の中に溜まっている脳脊髄液を出す必要があります。
    キアリⅡ型奇形とは頭の中にある小脳・脳幹といった組織が下へ向かって落ち込み、脳幹や脊髄への圧迫が生じ、様々な症状が出現してくる病気です。症状としては、ミルクの飲む時にむせこみやすい、息が上手にできない、上肢に強い麻痺などがあります。
    これらの症状が出現してきた場合には、圧迫を解除する手術が必要となります。また、将来的に脊髄髄膜瘤を修復した部位で癒着が生じ、成長とともに、引っ張られることで、脊髄の障害が生じたり、脊髄の中に水がたまる脊髄空洞症を併発することがあります。
    これらにより、下肢の運動知覚障害や排尿排便障害の悪化を認める場合、癒着部分を剥がしたり、脊髄の中に溜まっている水を排出する手術が必要となる場合があります。

  • ③脊髄脂肪腫
  • 背中の神経が作られる過程に問題があったため、皮膚の下にある脂肪組織が脊髄にくっついた状態となっている病気です。
    新たに出生する100万人のうち30-60人の割合で発生します。脊髄は下の部分がくっついているため、身長が伸びるにつれて脊髄は上下に引っ張られた状態となります。
    その結果、両足の運動知覚障害、膀胱直腸障害などが出現します。
    治療法としては、脊髄にくっついている脂肪を切離し、脊髄が引っ張られている状態を改善させます。症状が出現してくる場合は、成長とともにゆっくり出現してくることが多いため、どの時期に手術を行うかについては、いまだ意見が分かれるところです。

  • ④終糸肥厚、終糸脂肪腫
  • 脊髄を安定させるための組織の一つに終糸があります。終糸は脊髄の一番下の部分から始まり、腰椎の下の仙椎に到達します。終糸は通常弾力性のある組織ですが、脂肪成分や線維成分が多く含まれることで弾力性が乏しくなる場合が稀にあります。(終糸肥厚・終糸脂肪腫)
    急激に身長が伸びる時に終糸の弾力性が乏しい場合、脊髄全体が相対的に足側へ引っ張られる状態となり、様々な症状が出現します。(脊髄係留症候群)
    症状は足の麻痺、痛み、しびれ、排尿・排便障害などがあります。
    治療法は、引っ張られた終糸を切断し、脊髄の引っ張られた状態を解除します。(脊髄係留解除術)

  • ⑤キアリ奇形
  • キアリ奇形は画像上、ⅠからⅣ型まで分類されていますが、主なものとしてⅠ型とⅡ型があります。
    Ⅰ型は小脳の受け皿となる部分の頭蓋骨が十分に発達していないことが原因となり、頭蓋骨の出口部分を通って小脳が下方へ落ち込み、その結果、脳幹・脊髄を圧迫し、症状が出現します。Ⅱ型は通常、脊髄髄膜瘤を伴っています。
    脊髄髄膜瘤の部分で髄液が排出されることで、小脳・脳幹が頭蓋骨の出口部分を通って下方へ牽引され、その結果、脳幹・脊髄を圧迫し、症状が出現します。
    キアリⅠ型奇形の主な症状として頭痛があります。特にいきんだ時に頭痛が増強します。脊髄空洞を併発した場合には手足の痺れ症状が出現します。
    キアリⅡ型奇形は上記の通り(②脊髄髄膜瘤の項目に記載)です。
    治療法は、頭蓋骨の出口部分の骨や、脊椎の骨の一部を削り、脳・脊髄を包んでいる硬膜を切開して広げることで、脳幹・脊髄への圧迫を解除します。

  • ⑥くも膜嚢胞
  • 脳の表面にはくも膜という膜があり、そのくも膜に包まれ、内部に液体が貯留した状態のことをくも膜嚢胞と言います。
    この病気を有している割合は、すべての年齢を対象にした場合、1000人に0.23-2.6人の割合です。4歳以降は嚢胞が増大することは稀であり、自然経過で縮小や消失することがあります。
    しかし、徐々に大きくなったり、脳の表面に内容物の液が漏出し、その後、血腫を形成する場合もあります。これらにより症状が出現してきた場合には、外科的治療の適応となります。
    治療方法としては、頭を開けて嚢胞を切除、開窓する方法、内視鏡で嚢胞を切除、開窓する方法、嚢胞の中にチューブを挿入する方法などがあります。

  • ⑦頭蓋骨縫合早期癒合症
  • 頭の骨は子どもの間は複数の骨が緩くくっついている状態で、脳を守る器として機能しています。
    脳が成長する時、その大きくなろうとする圧力が頭の骨に伝わり、頭の骨も一緒に大きくなります。この縫合部分は成長に伴ってくっついていきます。
    頭蓋縫合早期癒合症とは、この骨のくっついている部分が早い段階でしっかりとくっついてしまう病気です。新たに出生する100万人のうち300-500人の割合で発生します。
    脳が大きくなる時に頭の器が小さいままだと、脳への圧迫が強くなります。脳への圧迫が強くなると、脳へ血液を送ることが困難になり、脳にダメージが加わります。そうなる前に、頭の骨を拡大する手術が必要となります。
    そのため、乳児期に手術を行うことが多いです。骨のくっつき方により様々な頭の形になります。
    年齢やどの部分がくっつくかによって手術方法が変わります。頭の骨を切り外し、同時に拡大して組み合わせる方法と、骨に切り込みを入れて、延長器を設置し、時間をかけてゆっくり拡大する方法があります。

  • ⑧脊髄空洞症
  • 脊髄内に空洞を形成する病気で、通常は髄液で満たされています。キアリⅠ型奇形、脊髄髄膜瘤(キアリⅡ型奇形)、脊髄脂肪腫などに合併することが多いです。
    症状は緩徐か、悪化と安定を繰り返す段階的な進行を呈します。症状は空洞の形成される場所にもよりますが、頚髄レベルであれば、最初は片側の上肢の温度や痛みに対する感覚が障害され、筋肉の萎縮による運動麻痺が出現してきます。
    その後、反対側にも同様の症状が出現し、下肢においても運動麻痺、感覚障害が出現してきます。
    さらに進行すると、足の位置感覚がわかりにくくなり、階段を降りるときに足の踏み外しやすくなるなどの症状がでてきます。また、いきんだ時、通常ある感覚障害がある部分に一過性に強い痛みが生じることがあります。
    空洞症が進行すると、側彎症という脊椎が彎曲する病気も併発します。
    治療方法としては、まず原因となっているものに対する治療を行います。水頭症などにより水が貯留していることが原因であれば、水を排除する治療を行います。
    小脳などの落ち込みが原因であれば、頭蓋骨の出口部分の骨や、脊椎の骨の一部を削り、脳・脊髄を包んでいる硬膜を切開して広げることで、脳幹・脊髄への圧迫を解除し、脳脊髄液の流れを改善させます。
    また、脊髄の下の部分が癒着していることで生じている場合には、癒着部を剥離し、脊髄が足側へ引っ張られている状態を改善させます。これらにより改善が無い場合には、空洞内にチューブを挿入します。

  • ⑨先天性脊椎疾患
  • 子どもにおいて頭蓋骨と頚椎の移行部(頭蓋頚椎移行部)において様々な病気があります。頭蓋頚椎移行部は頭蓋骨、環椎(一番上の首の骨)、軸椎(二番目の首の骨)で形成されています。
    この部位は発生の段階で複雑な過程を経ているため、異常が発生しやすくなっています。そのため、この部位では骨が後上方へ突出することで脊髄や脳幹への食い込みが発生したり、骨の輪っかが小さいため脊髄が常時圧迫されていたり、骨がグラグラのため脊髄への繰り返す圧迫が生じているなどの状況が発生します。
    そのため、手術で圧迫を解除したり、固定が必要となる場合があります。

  • ⑩水頭症
  • 何らかの原因で脳の中にある脳室や脳の表面に脳脊髄液が貯留し、脳の圧が亢進した病態のことを言います。
    脳脊髄液は脳で作られ、脳室内へ流れていき、脳室と脳の外のスペースを行ったり来たりしています。その後、脳脊髄液は排出、吸収されていきます。
    その脳脊髄液の循環が様々な原因で破綻することで、脳脊髄液が貯留する状態となります。原因としては、先天的なもの、脳出血・脳腫瘍・感染症・血管障害などに伴うものなどがあります。
    症状としては乳幼児の場合、頭囲拡大、大泉門の拡大、膨隆で発見されることが多いです。年長児では頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどで発見されることが多いです。
    治療としては、頭の中に溜まっている脳脊髄液を抜く手術を行います。年齢、脳脊髄液の状態、原因となっている病気などにより、リザーバーチューブ、シャント手術、内視鏡手術などから治療方法を選択します。

  • ⑪脳腫瘍
  • 脳腫瘍は本来成人の病気であり、脳腫瘍全体でみると、15歳未満は全体の7.4%を占めるにすぎません。
    ただし、小児がんの中では白血病に次いで第二位の頻度です。しかも小児脳腫瘍は小児がんによる死亡原因の第一位です。0歳からでの発症することがあります。そのため、早期発見早期治療が重要となります。
    症状は大きく2つに分けられます。1つは脳腫瘍が発生した場所における脳の機能低下(手足の麻痺、言語障害、記憶障害、目の動きの障害、顔の動きの障害、歩行時のふらつき、けいれんなど)と、もう1つは脳の圧が亢進することによる頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、視力障碍、意識障害など)があります。
    これらのような症状がある場合、脳腫瘍が疑われる場合にはMRIにて評価します。
    治療方法は、外科的治療のみでなく、化学療法、放射線療法などを組み合わせて行います。

  • ⑫脳動静脈奇形
  • 脳動静脈奇形とは、お腹の中にいる時に、脳血管が作られていく過程でうまく血管の形成ができず、栄養に関する動脈が、通常であれば経由するべき小さな血管(毛細血管)を介さず、異常な血管の塊を介し、排出する静脈に移行する血管の奇形のことを言います。
    1年間の発生率は100万人に10-20人の割合です。脳出血で発症することが多く、1年間に出血する可能性は2-4%、一旦出血すると、1年間に出血する可能性は6%と上昇します。
    子どもの脳出血の原因として脳動静脈奇形が最も多いです。その他にけいれん発作、意識障害、頭痛、手足の麻痺などで発症することもあります。
    治療方法としては、外科的治療、血管内治療、放射線治療などがあります。大きさ、場所、排出する静脈のタイプなどにより、治療方法を選択します。

  • ⑬もやもや病
  • 頭の中に入ってくる脳血管が進行性に狭くなったり、閉塞したりするため、その結果、脳血流を補うために迂回する新しい血管ができた状態のことをもやもや病と言います。
    1年間の発生率は100万人に3.5-5人の割合です。つまり、日本では年間約400-500人の患者さんが新しくもやもや病と診断されていることになります。好発年齢は5歳を中心とする小児型と、30-40歳を中心とする成人型があります。
    子どもは脳血流が減少して生じる脳虚血に伴うものが多く、大人は脳出血が半分、脳虚血が半分となっています。子どもは過呼吸状態(泣いている時、熱いものを冷ますためにフーフーと息を吹きかける時、鍵盤ハーモニカやフルートなどを吹いている時)で脳血流が減少し、脳虚血状態となり症状が出現します。
    脳虚血症状としては、意識障害、手足の力が急に抜ける感じ、手足のしびれ、痙攣、頭痛などがあります。
    治療方法としては、バイパス手術を行います。直接的血行再建術と間接的血行再建術があり、患者さんの状態や病気の程度により選択しています。

  • ⑭頭部外傷;軽傷頭部外傷(脳震盪を中心に)”クリック”

などがあります。

上記内容は子どもの脳・脊髄疾患においていろいろある病態の中でも主要な部分についてです。これ以外にもさらにさまざまな病態があります。
成長・発達の段階で様々な心配事が出てくると思われますが、まずは診察を受けていただき、必要であれば検査を受けていただき、その心配事を減らしていくことが重要かと思われます。
また、その中に上記のような病気が見つかるかもしれません。しかし、早く発見されれば、早めの対応が可能となります。

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