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帯状疱疹の発生部位と神経支配による鑑別疾患【名古屋市・春日井市・小牧市エリアの方向け】
このページについて
このページは、名古屋市(中区、西区、守山区など)・春日井市・小牧市・北名古屋市など近隣の方が早く受診できるよう、地域名を明記して構成しています。疾患によっては早期対応が重要となる場合もあるため、適切な医療機関を探す際の参考としてご活用いただければ幸いです。
前額部・顔面の痛みの部位(図:赤・青・黄の円)
これは三叉神経(CN V)の領域(3枝)
- 🔻 第1枝(V1:眼神経)
- 額、眼の周囲、鼻背 – 🔴 赤円 – 眼部帯状疱疹、三叉神経痛、前頭洞副鼻腔炎
- 🔻 第2枝(V2:上顎神経)
- 下眼瞼、頬、上唇 – 🔵 青円 – 上顎帯状疱疹、三叉神経痛、上顎洞副鼻腔炎
- 🔻 第3枝(V3:下顎神経)
- 下顎、口角、耳前部 – 🟡 黄円 – 下顎帯状疱疹、三叉神経痛
🔎 鑑別後に重要:
:第1枝での帯状疱疹は「目の充血」「角膜炎」を伴う場合があり、眼科受診必須です。
:血管の圧迫、脳腫瘍に伴う三叉神経痛の場合は、脳神経外科でのMRI診察が必須です。(MRIでの鑑別は、頭痛外来でも診察可能です。)
:副鼻腔炎で治療は耳鼻科受診が必要です。
耳の周囲の帯状疱疹(図:緑の円)
耳周囲は以下の2神経が支配します。
- 🔻 大耳介神経(C2-C3)
- 耳たぶ、下顎角 – 頸部手術後の神経障害など
- 🔻 後耳介神経(顔面神経枝)
- 耳介背側・耳の後方 – ラムゼイ・ハント症候群(耳の帯状疱疹+顔面神経麻痺)に注意
🔎 鑑別後に重要:
:顔面神経麻痺がある場合、脳梗塞が否定できれば早めの耳鼻科受診が必須です。
後頭部の帯状疱疹(図:紫の円)
後頭部は、頸神経後枝(特にC2)によって支配されます。
- ✅ 大後頭神経
- 後頭部中央〜頭頂部 – 帯状疱疹後神経痛、椎骨動脈解離による頭痛
- 🔻 小後頭神経
- 側頭部の後方〜耳の後ろ – 頸椎症性神経痛など
🔎 鑑別に重要:
:急性期に片側性の激痛がある場合「椎骨動脈解離」などの重篤疾患との鑑別が必要です、脳神経外科でのMRI診察が必須です。
特に顔面、頭部の痛みで、神経内科、脳神経外科受診とMRIでの鑑別が必要な疾患
腫瘍・血管障害・脱髄疾患・感染症・頸椎疾患を含む全体像です。
特に「帯状疱疹と鑑別が必要」「皮疹がない痛みと間違いやすい」ものを中心にまとめています。下記はMRIでの診断になります。
① 神経血管圧迫症候群(Neurovascular compression syndromes)
- ✅ 三叉神経痛(Trigeminal neuralgia)
- 上小脳動脈や椎骨動脈による三叉神経根の圧迫/電撃様疼痛/MRIで血管圧迫確認
- ✅ 顔面けいれん(Hemifacial spasm)
- 顔面神経(CN VII)への血管圧迫/顔面筋の不随意収縮/同様にMRIで評価
② 腫瘍性病変
- ✅ 聴神経腫瘍(Vestibular schwannoma)
- 難聴・耳鳴・顔面のしびれ/CPA腫瘍の代表
- ✅ 髄膜腫(Meningioma)
- 徐々に進行する局所症状・頭痛/硬膜付着性/MRIで診断
- ✅ 上咽頭癌の頭蓋底浸潤
- 顔面痛、耳の圧迫感/側頭骨浸潤により三叉神経痛様症状出現
- ✅ 神経鞘腫(Trigeminal schwannoma)
- 三叉神経領域の慢性痛・知覚異常/Gasser神経節近傍に発生
③ ウイルス感染・炎症性疾患
- ✅ VZV脳炎・脊髄炎・髄膜炎
- 発熱・意識障害・神経麻痺/皮疹がなくても発症(Zoster sine herpete)あり
- ✅ 単純ヘルペス脳炎
- 側頭葉主体、精神症状・けいれん/緊急治療が必要な疾患/発症初期は鑑別困難
- ✅ 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
- ワクチン後やVZV後/視覚異常・構音障害/MRIで多発病変/若年者に多い
④ 脳血管障害
- ✅ 椎骨動脈解離
- 後頭部痛+頚部痛、発症急性/MRAで要評価
- ✅ 脳幹梗塞 / 視床梗塞
- 感覚異常・顔面痛・嚥下障害
- ✅ 動脈瘤
- 突然の頭痛、動眼神経麻痺、圧迫による神経痛様症状や出血リスク
⑤ 脱髄疾患・その他
- ✅ 多発性硬化症(MS)
- 再発性、若年女性、視覚・運動症状+顔面痛
- ✅ 脊髄空洞症(Syringomyelia)
- MRIで頚髄・延髄病変を確認
⑥ 頸椎疾患(※頭部・顔面痛と関連するもの)
- ✅ 頸椎症性神経根症(C2〜C3)
- 後頭部〜側頭部の放散痛、肩こり様痛み/C2神経根の障害 → 後頭神経痛と類似
- ✅ 上位頸髄病変(C1〜C2)
- 頭痛、後頭部のしびれ、項部痛/外傷・関節リウマチ・骨軟部腫瘍による圧迫ありうる
- ✅ 後頭神経痛(大後頭神経・小後頭神経)
- 頭皮のピリピリ痛、アロディニア、圧痛点あり/C2後枝由来、帯状疱疹との鑑別困難なことも
- ✅ 環軸椎不安定症(リウマチ性など)
- 動作時の後頭部痛・しびれ・めまい/特に高齢者で無症候から進行することあり
- ✅ 頸椎椎間板ヘルニア(C2/3)
- 首の動きで悪化する後頭部痛/頭痛と首の痛みを合併する場合は画像検査が有効
帯状疱疹の鑑別まとめ
顔面や頭部に痛みを感じたとき、帯状疱疹だけでなく、神経・血管・感染・腫瘍・頸椎など多岐にわたる疾患の可能性があります。
特に次のようなケースでは、脳神経外科・神経内科での早期MRI評価が重要です。
✅ 額・目の奥・頬・顎など顔面の一部が電撃様に痛む
✅ 皮疹がないのにピリピリする神経痛が続く
✅ 耳の奥・後頭部・こめかみがズキズキする
✅ 顔面神経麻痺・目の充血・ふらつき・嚥下障害がある
✅ 市販薬や歯科治療で改善しない痛みがある
📍 名古屋市・春日井市・小牧市など近隣の方へ
これらの疾患の多くは、画像検査(MRI・MRA)による鑑別が必要であり、放置すると後遺症や視力・聴力障害を残すこともあります。
「帯状疱疹かもしれない」「皮疹はないけど痛い」という初期症状の段階で、迷わず専門医を受診することが大切です。
当院では、名古屋市(中区、西区、守山区など)・春日井市・小牧市・北名古屋市など近隣地域からのご相談に対応し、必要に応じて眼科・耳鼻科・皮膚科への紹介も行っています。
一般的な帯状疱疹の話と帯状疱疹ワクチンについても少し説明
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella zoster virus)が原因で発症する感染症です。
子どもの頃に水ぼうそう(水痘)として感染したウイルスが、治癒後も神経節に潜伏し続け、加齢やストレス、疲労、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発症します。
よって、「水痘」と「帯状疱疹」は異なる病気ですが、実は原因となるウイルスは同じです。違うのは、感染のタイミングと発症のメカニズムです。
・初めて感染:水痘として全身に発疹
・免疫により治癒 → ウイルスは完全に消えず、脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏
・加齢や免疫低下時に再活性化 → 帯状疱疹として再発
ヒトヘルペスウイルス3型(Human herpesvirus type 3, HHV-3)
別名:水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus, VZV)
発症すると、神経の流れに沿って皮膚に赤い発疹や小さな水ぶくれ(水疱)が帯状に現れ、強い痛みやしびれ、かゆみなどの神経症状を伴うのが特徴です。
皮膚症状は2~3週間で治癒しますが、炎症が強い場合は色素沈着や潰瘍を残すこともあります。
特に高齢者や免疫力が低下した方で発症しやすく、70歳代での発症が多いことが知られています。
また、皮膚症状が治った後も強い痛みが長期間残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という合併症があり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
どんな人が帯状疱疹になりやすいか
- 🔻 年齢によるリスク
- 50歳以上に多く、70歳以上では3人に1人が生涯で発症。免疫機能の低下が主因。
- 🔻 体調や基礎疾患によるリスク
- がん・腎不全・糖尿病・膠原病、ステロイド使用などで免疫力が低下している方。
- 糖尿病:2.4倍、腎不全:2.2倍、関節リウマチ:2倍以上のリスク。
- 悪性リンパ腫:8.4倍、全身性エリテマトーデス:4.1倍と非常に高リスク。
- 🔻 ストレスや過労
- 睡眠不足や栄養不良も発症リスクを高めます。
- 🔻 若年層でも注意
- 介護や育児、仕事によるストレスで若年でも発症あり。
発症リスクのセルフチェック(※該当する方は、帯状疱疹ワクチン接種による予防をおすすめします。)
- ✅ 50歳以上でワクチン未接種
- 年齢的リスクが高まるため。
- ✅ 糖尿病や高血圧などの持病がある
- 免疫力の低下が想定される。
- ✅ 免疫抑制剤を長期使用している
- ウイルス再活性化のリスクが高い。
- ✅ がん治療の経験がある
- 治療に伴う免疫低下が原因。
- ✅ 強いストレスや過労が続いている
- 免疫バランスが乱れている可能性。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹は早期の治療が重要です。
主な治療は抗ウイルス薬の内服または点滴で、ウイルスの増殖を抑えることで症状の進行や合併症のリスクを軽減します。
痛みに対しては鎮痛剤や神経障害性疼痛に対応した薬剤を併用することもあります。
自己判断で放置せず、早めに皮膚科や内科などの医療機関を受診しましょう。
春日井市で帯状疱疹ワクチン接種に助成が受けられます(令和5年度以降)
帯状疱疹ワクチンについて
対象者
帯状疱疹ワクチンは、主に50歳以上の方が接種対象です。2025年度からは、定期接種の対象として「65歳を迎える方」や「60~64歳で特定の条件を満たす方」、さらに70歳以上の節目年齢の方も対象となります。
任意接種としては50歳以上であれば接種可能です。
ワクチンの種類と特徴
現在日本で利用できる帯状疱疹ワクチンは大きく2種類あります。
- 🔻 ビケン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)
- 種類:生ワクチン
- 接種回数:1回
- 接種方法:皮下注射
- 対象年齢:50歳以上
- 予防効果:1年後 約6割、5年後 約4割
- 主な副反応:注射部位の痛み・腫れ(まれに重篤)
- 接種できない方:免疫低下者、妊婦など
- 🔻 シングリックス(組換え帯状疱疹ワクチン)
- 種類:組換え(不活化)ワクチン
- 接種回数:2回(2ヶ月間隔)
- 接種方法:筋肉内注射
- 対象年齢:50歳以上
- 予防効果:1年後・5年後 約9割、10年後 約7割
- 主な副反応:注射部位の痛み・発赤・筋肉痛・全身倦怠感
- 接種できない方:成分に重度アレルギー歴のある方
✔ ビケン(生ワクチン)は1回接種で済みますが、免疫力が低下している方や妊娠中の方は接種できません。
✔ シングリックス(組換えワクチン)は2回接種が必要ですが、より高い予防効果と長期間の持続が期待できます。免疫力が低下している方でも接種できる場合があり、医師との相談が必要です。
接種方法・費用・副反応
- ✅ 接種方法
- ビケン:皮下注射1回
シングリックス:筋肉内注射2回(2ヶ月以上間隔) - ✅ 費用
- 自治体によって異なりますが、春日井市では助成があります。
詳細はお問い合わせください。 - ✅ 副反応
- 両ワクチン共に注射部位の痛み・腫れ・発赤が見られることが多いですが、数日で軽快します。
まれに重篤なアレルギー反応も報告されています。 - ✅ ワクチンの効果
- 帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果が高いとされています。
特にシングリックスは長期間にわたり高い効果が報告されています。
春日井市でのワクチン接種
勝川脳神経クリニックでは、帯状疱疹の予防についてご相談いただけます。
ワクチン接種をご希望の方は、事前にご予約のうえ、健康状態や既往歴について医師とご相談ください。
接種の可否や、最適なワクチンの選択についても丁寧にご説明いたします。
よくあるご質問
- 🔻 Q. 帯状疱疹ワクチンは必ず接種しなければなりませんか?
- A. 必ずではありませんが、50歳以上や帯状疱疹未経験の方には高い予防効果が期待できるため、接種をおすすめします。
- 🔻 Q. 既に水ぼうそうにかかったことがあっても接種できますか?
- A. はい。水ぼうそう経験者が対象です。ウイルスは神経節に潜伏しており、再発予防に有効です。
- 🔻 Q. ワクチンの副反応が心配です。
- A. 多くは軽度の痛み・腫れ・発赤ですが、まれに重度の副反応もあります。
詳細は医師にご相談ください。
※本記事は勝川脳神経クリニック 院長 青山 国広 医師(日本脳神経外科専門医/日本脳卒中専門医/頭痛指導医)が監修しています。
監修日:2025年5月15日
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